第21回 関西部会講演会 (2025/6/18) 終了の挨拶/会員限定コンテンツの公開のお知らせ

第21回関西部会講演会は、2025年 6月18日(水)にAP大阪駅前 APホールⅠを講演会場として、Teamsによる遠隔視聴を併用したハイブリッド形式で開催させて頂き、多くの方にご参加を頂き、盛況に開催でき無事終了致しました。心より御礼申し上げます。

今回は、米中では無人タクシーサービスが拡がりつつあるL4(高度運転自動化)達成にむけた自動運転の現状と課題について、IoTやAIの技術を活用したフィジカル空間(現実世界)とサイバー空間(仮想世界)をつなぐデジタルツインの可能性や実用化事例、最新の3Dワークフローについて、また、製造業におけるAI活用の最前線ユースケースや関連する技術要素(RAG、MCPなど)について、大学で自動運転の実用化に向けて研究をされている方や、企業でAI/IoT技術を活用した新事業開発・展開をされておられる方々にご講演をして頂きました。

最初に講演1として、

名古屋大学 未来社会創造機構 モビリティ社会研究所 特任教授 二宮 芳樹 様に【自動運転の現状と課題】のテーマでご講演をして頂きました。
最初に、自動運転の国内外の現状について、日本では2025 年に L4 の実証レベルであるが、米国や中国はドライバレスロボットタクシーの実サービスが、欧州は中国製ドライバレスEV バスの実サービスが開始されている。トラックの自動運転では日本は官主導で、物流危機の背景から限定地域•限定時間で L4 運行を開始し、米国はスタートアップ中心に物流大手と連携での商用運行を開始。欧州はメーカー主導での実証中、中国は国家主導の実証を推進中である。最近はL2であるが,E2E(End-to-End)AIによる自動運転がTeslaや中国のNEV車に搭載され始めている。自動運転の実現には、車両の認知・判断・操作を、車両が自律して行うことが必須である。L3 以上に対する安全は、WP29で、合理的に予見可能、回避可能な事故を起こさないことが基準化されており、如何に、認知・判断・操作機能を、有能で注意深いドライバ以上に仕上げていくかが課題である。自動運転は、1945 年頃から、磁気誘導線や磁気ネイルによるインフラ型から始まり、現在のような自律型は 1970 年頃からステレオカメラによる方法から始まった。現在のL4自動運転を実現したキーテクノロジーは① 3D-LiDAR、②ディジタルインフラ( HD Map:Hi-Definition 高精度 3 次元地図)、③AI/深層学習である。①3D-LiDAR は、レーザ光による 3次元計測ができ、L4 の実現には重要である。②ディジタルインフラは周囲環境認識の基本となる道路構造をデータとして事前に与えるものである。一般道での L4 の実現には、開発リソースが膨大に必要であり、米国や中国の巨大 IT や一部のベンチャーのみが達成(自動車会社は未達)し、車両コストも高価で、タクシードライバの置換えには採算は合わない。また、L4 の具体的安全基準がなく、評価検証法も未確立などの課題がある。最近、判断部分をニューラルネットで行う E2E(End-to-End)の自動運転技術が急成長し、これまでの L2+の性能を大幅に向上している。L4 の自動運行装置の行動安全の具体的な外部基準がない自動運転実用化の課題については、有能で注意深いドライバを具体化し、実交通流の統計データから交通外乱(他車の振る舞い)の範囲を決定するなどを日本自動車工業会や日本自動車研究所を中心に国際基準の第一歩を進めた法規や標準を整備しつつある。また、安全評価方法の国際標準に基づく安全設計・評価/検証プロセスや手順も整備しつつある。安全性の評価については、シミュレータの活用も進められており、自動運転シミュレーションプラットフォーム「DIVP(Driving Intelligence Validation Platform)」が国策として開発されている。また、これらの活用には、多様な交通シーンのデータに加えて、良い運転のデータなど膨大なデータが必要であり、今後生成 AI によるデータ生成が期待される。また、自動運転を進めていくには、自動運転ソースソフトウェアのオープン化が必要であり、名古屋大で開発され、現在国際業界団体 Autocare Foundation が管理している「AUTOWARE」や、中国の IT ジャイアントBaidu が開発・管理している「apollo」がある。Autocare は、世界初のオープンソース自動運転ソフトウェアで 30 以上の車両、20 以上の国、500 以上の組織で活用されている。自動運転の SDV(Software Defined Vehicle)化も進められており、オープン化のためには、API の標準化が必須で、Open SDV Initiative が 2024 年 10 月に発足し、名古屋大学の高田教授がリーダーで 48 社が参加しており、2025年 3 月末に API の一次暫定版を作成・公開した。自動運転の社会実装には、技術的、社会的課題があり、全ての道路交通の改善に向けた交通ルールやインフラ整備なども併せた課題解決への取り組みが必要である。自動運転の現状から実現に向けての課題やその解決への取り組みなど技術的視点だけでなく社会的視点でもご紹介をして頂き、大変興味ある内容をご講演して頂いた。

次に講演2として、

株式会社理経 次世代事業開発部 執行役員 部長 石川 大樹 様に【NVIDIA Omniverse™が拓く製造業DXとデジタルツイン活用の最前線】のテーマでご講演をして頂きました。
最初に、デジタルツインとは、現実のモノ・システム・プロセスを仮想空間に正確に写し取ったモデルで、設計段階では実機の代わりに動作を検証し、運用段階では現物と同期して状態を監視・予測する。また、シミュレーション、モニタリング、人材やAIのトレーニング、意思決定支援にも有効である。センサーや履歴データと連携し、過去と現在を可視化しながら将来の挙動を予測し、目的に合わせて必要な精度と更新間隔を定め、専門知識と物理法則を根拠に構築したシステムである。製造業におけるデジタルツインの活用用途は、工場の設計段階では、人と設備、製造物、環境などを昼夜での相互の動作を設計検証への活用や、運用段階に向けて、製造物や設備、自走ロボットなどとの連携動作をシミュレーションし、人材やAIのトレーニング、意思決定支援などについて活用がある。また、消防士教育やドローン訓練シミュレータなどへの活用もあり、これらについて、デモ動画でご紹介頂いた。しかし、その活用には、レガシーインフラやツールが乱立し、ツール間でデータが相互に利活用できないなどの課題があり、期待する生産性やビジネス成果にはつながっていない。デジタルツインを実現できるツールとして3DファイルフォーマットOpenUSD(Universal Scene Description)に対応したNVIDIA Omniverse™をご紹介頂いた。OmniverseはOpenUSDベースの産業デジタル化アプリケーション開発プラットフォームで、リサーチからデザイン、オペレーション、プロダクト、クリエイティブ、マーケティング、セールスまで多様なシーンで活用できる。OpenUSD対応で、リアルなグラフィックスが実現できるRTX(Real-Time Ray Tracing)テクノロジーが活用でき、アクセラレーテッドコンピューティング、AI開発ができる。OpenUSDは強力な3Dフレームワークで、外観検査用の学習データなどの作成ができ、3D相互運用性、非破壊、コラボレーションワークフローが実現できる。非破壊的な編集を保証するコンポジションアーク(Composition Arcs)や、最終的なシーン(Stage)をどう構築するかを決めるコンポジションアークをどのような順序で合成するのかを定義するLIVRPS(Local:ローカル、Inherits :継承、Variant Sets:バリアントセット、References:参照、Payload:ペイロード、Specializes:特殊化)の活用も大切である。特に、作成者が複数の選択肢の集合をパッケージ化し、その集合から一つを選択して、非破壊的に切り替え、もしくは拡張するコンポジションアークであるVariantSetの活用も大切である。リアルタイムグラフィックは、エンターテインメントのためだけではなく、自律走行シミュレーションやロボットシミュレーション、インダストリアルビジュアライゼーションなどのデジタルツインの可視化には必須である。生成AIで加速するデジタルツイン開発について、NVIDIA USD NIM 推論マイクロサービスの開発ワークフローを合理化したユースケースは、コード生成(Python USD)やアセットの検索、フォトリアリスティックな生成拡張などがある。NVIDIA Omniverse™を活用した製造業DXとデジタルツイン活用の最前線について、Omniverseの特徴や活用事例、今後への期待などをご紹介して頂き、大変興味ある内容をご講演して頂いた。

次に講演3として、

クラスメソッド株式会社 製造ビジネステクノロジー部 マネージャー 濱田 孝治 様に【製造業における生成AI活用のユースケースと関連技術要素(RAG、MCP)の解説】のテーマでご講演をして頂きました。
最初に、生成AIの最新の活用事例として、NotebookLM(Google)を使い、経済産業省が発行している2022年版から2025年版のものづくり白書から、年毎の特徴や傾向などについてレポートを作成する作業を、NotebookLMが自動作成するデモ動画を紹介頂いた。製造業のクラウド活用・デジタル化事例では、工場内などに設置されたPLCデータをクラウドに保存して可視化、分析、通知を行うソリューションとして、IoTアプリ開発も行ったClassmethod PLC Data To Cloudを紹介頂いた。具体的な可視化情報には、保管温度、殺菌温度推移、異物検知回数などの品質管理情報や、総合設備効率、サイクルタイム、アクチュエータ 基準値超過などの設備監視情報がある。製造業向けアジャイル支援サービスは、研修によるティーチングや伴走型開発、AI駆動開発支援サービスなどを提供している。ハノーファーメッセ2025の様子とAI活用ユースケースについては、総合電機メーカーであるSiemensからは、産業用コパイロットとインダストリアルメタバースの融合として、「Siemens Industrial Copilot」を中心にした設計から、製造、運用に至るまでの製品サイクル全体をカバーするデジタルツインと、それを加速させる生成AIの統合し、従来数時間かかっていたプログラミング作業が数分に短縮できるAIユースケースが展示されていた。シュナイダーエレクトリックは、エネルギーコストを15%削減するAIによるエネルギーマネジメントの自律化できるシミュレーションを、BECKOFFは、サイクルタイムを従来比で30%向上できるコントローラー上で完結するAIビジョン制御を、SAPは、生成AIによるサプライチェーン寸断リスクの自律的回避できる展示をしていた。AWSは、AWS IoT Coreで世界中の工場から収集した設備データから、リモート監視と異常検知ができるIoTとデジタルツインを展示していた。AIは、「予測するAI」から「創造するAI」へ進化しており、ハノーファーメッセでは、AIがほぼ全てのブースでサービスに組み込まれていた。従来のAI活用から生成AIの登場により、単なる分析を超え「創造」や「複雑な問題解決」が可能になってきた。生成AI(LLM)に情報を渡して、より正確で信頼性の高い回答をさせる技術であるRAG(Retrieval-Augmented Generation)は、既に根付いている。AIの進化として、自然言語によるデータ分析の事例として、AIとツール・データ間の接続を単純化し、MⅹN統合問題(M個のAIアプリがN個のツールに接続しなければならない)を解決するMCP(Model Context Protocol)があり、東京とニューデリーの気温比較(2025年5月13日〜5月20日)のグラフから、気温比較分析レポートを自動作成するデモ動画を紹介頂いた。また、自然言語による3Dモデル作成の事例として、無料オープンソースCADソフトウェアの「FreeCAD」を活用した「星のカービィ」や大阪関西万博の公式キャラクターである「ミャクミャク」の3Dモデルを作成するデモ動画を紹介頂いた。製造業に関わるデータは幅広く、また、サイロ化したデータをいかに活用していくかが課題であり、解決策の候補としてUNS(Unified Name Space)やIDF(Industrial Data Fabric)がある。UNSは製造環境における「単一の信頼できる情報源」として機能するイベント駆動型のデータアーキテクチャであり、AIモデルやエージェントと相性が良く、データの一元化と標準化やリアルタイム性の確保などができる。IDFは、製造業の多様なデータソースを統合し、シームレスなデータアクセスと分析を可能にするアーキテクチャフレームワークで、現地では複数の実装プレイヤーが展示していた。最近のキーワードとしてMCP(Model Context Protocol)とA2A(Agent2Agent Protocol)がある。これらの技術の活用により、自己修復型生産ラインや動的需要応答型サプライチェーンなどが実現できる時代になってきた。製造業におけるデジタル革新の波はAIを中心として非常に大きく、データを整備して未来のAI活用に向けて備えることが非常に重要になってくる。製造業における生成AI活用のユースケースと関連技術要素の最新動向、将来への期待などについて、ご紹介をして頂き、大変興味ある内容をご講演して頂いた。

また、最初に関西部会長の西村から講演会開催の挨拶をさせて頂き、最後に関西部会の濱田副幹事から講演会閉会の挨拶にて締めくくり、盛大に開催を終えることができました。

講演会後に開催しました交流会では、ご講演をして頂きました二宮様、石川様、濱田様にもご参加頂き、ご講演者の方々とのお話や、参加された皆さん相互でのお話が進み、楽しく有意義な情報交換・交流の場として開催することができました。

講演会、交流会の開催に際しましては多くの方々のご協力を得て開催させて頂くことができました。真に有難うございました。深く御礼申し上げます。
引き続きIoTを中心とした関連技術に関する最新事例・技術研究を進めて応用ビジネスの発掘・展開に繋がり、関西地区の活性化に少しでも貢献できるように活動を進めさせて頂きますので、ご協力・ご支援の程、よろしくお願い申し上げます。

2025年 6月18日 NPO法人 M2M・IoT研究会 関西部会長 西村 雄二

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2025年 6月27日 NPO法人 M2M・IoT研究会 事務局